私の許可なく私に話しかけないで

2024/3/15

印象派展のために上野へ。美術館に向かう途中、広場で遊ぶ子供たちを可愛いなとぼーっと眺めていたら、いつの間にかすぐ触れられる距離に人がいた。楽しく遊ぶ子供たちに気を取られ、距離を詰められていることに気づかなかった。油断していた。

びっくりして思わず相手の顔を見たら、目が合った。70代ぐらいの無害そうな見た目の背の低いおじいさん。私と目が合うと「いい天気ですね。暖かいね。」と静かに話しかけてきた。なんの脈絡もなく、急に近づいてきた知らない男性に声をかけられる恐怖。その相手が小さなおじいさんであっても。なにかその後にも言葉を続けていたけど、足早に逃げたので続きの内容はわからなかった。

今思うとおじいさんは本当に世間話のつもりだったのかもしれない。すっかり春めいた陽気になり、開放的な気持ちで誰かに話しかけたかったのかもしれない。でも道端で知らない人から話しかけられて、ナンパや宗教的な勧誘じゃなかったことの方が少ないから逃げてしまった。世間話だったならごめんね、おじいさん。

でも本当になにかの意図があって声かけたのならやめてくれ。私の許可なく私に話しかけないでくれ。

 

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おじいさんから逃げて東京都美術館へ行く。印象派展は激混みでロッカーも全て埋まっていた。

いつも通り音声ガイドを借りたけど、印象派に関する知識はだいぶ定着していて、なんとなく知っていることが多かった。印象派なら今後音声ガイド借りなくてもいいかもしれない。

 

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お昼ご飯をどこで食べようかとうろうろしていると、赤字でデカデカと"4F 性病科"と書かれたクリニックの看板があった。もしそこに用があったら場所はわかりやすいけど入りにくいだろうな。

結局そのビルの一階の油そば屋に入った。麺の量を聞かれ、大にするか迷ったが、1人で食べ切れるかわからないので一応並にした。

食べる前に手を洗おうとしてトイレの前の洗面台を借りた。水垢や埃などで真っ黒になっていて驚くほど汚かった。お店選び失敗したかと一気に不安になる。

出てきた油そばは器が大きく、並なので麺は少量。大きな器のせいで、麺がとてつもなく少なく見える。これもサイズ選び失敗した、と思う。実際に食べてみると、心配していた味はまあ普通だった。チャーシューの塩気が強かった。メンマは美味しかった。メンマは私の好物だからよっぽどのことがない限り不味いとは思わない。

 

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Hといつもの居酒屋へ行く。7時過ぎに着いたら満席で待つことにした。待ち始めるとすぐに私たちの後ろに2組並んだ。結局30分ぐらい待った。

店員のお姉さんが野呂佳代に似ていた。Hが見た目だけじゃなく、声も似ていると言う。声は似てないでしょと言ったら、野呂佳代の声知らないでしょと食い下がって来たので、「私は知っている。野呂佳代YouTubeチャンネルを登録してるから。」と反論しておいた。

そして野呂佳代似のお姉さんの髪色がピンクと黄緑で、Hが甘露寺蜜璃のカラーじゃない?と気付く。たしかに。本当にそれを意識してその髪色にしているのか聞きたかったけど、店内が騒がしくて忙しそうだったので聞くタイミングを逃した。


TOKYO BASEの賃上げの話題から、Hのアパレルで働いていた前の彼女の話になる。前の彼女は自らの意思みたいのが見えなくて、ロボットと付き合ってるみたいだったと。何も考えてなかったんだと思うと。それに比べて私たちはお互い主張が強くて譲らない部分がある。たまにぶつかることもあるけど、それが良いんだ的なことを言っていた。

「私、だいぶあなたに合わせてるけどね」と主張すると、「表面上は合わせてくれることがあるけど、心の中では譲らない部分があるでしょう」と言われて、何も言えなくなった。おっしゃる通りです。